そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
「何をしている。入ってこい」
そう言われてしまった以上、見なかったことにして立ち去ることはもうできないと悟り、ソフィアはグッと拳を握りしめて、勇気を振り絞って顔を上げる。
真っ直ぐ前を見て五歩ほど進み、ゆっくりと膝を折って挨拶する。
「……ご、ごきげんよう、お父様」
声を上ずらせながら挨拶をしたが返事はなく、室内にゼノンとふたりっきりなことが心細くて仕方なくなる。
なぜマシューとハンナはついて来てくれなかったのか。どうして私だけ放り込まれたのか。
出て行けじゃなくて入って来いと言っといて、放置ってどういうこと?
……ってか、どうしてあなたそこにいるの。王様、暇なの?
徐々に冷静さを取り戻し、心の中で騒がしく捲し立てるも、もちろん怖くて発言はできず、沈黙は続く。
どうすればと思いながら視線を彷徨わせていると、バチりと目が合った。
凍りつくソフィアから視線を逸らさぬままに、ゼノンは膝の上に置いてあった本をパタリと閉じる。
「いつまで突っ立っている。早く座れ」
「えっ⁉ わ、私、そこに座るんですか?」