そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?

仕切りの向こうはそれほど広くなく、壁際にぎっしり詰まった本棚と観葉植物が並び、部屋の中央にテーブルと椅子、そして窓に近い場所にもひとりがけのソファーが置かれている。

そのソファーに足を組んで優雅に腰掛けていたのがソフィアの父、ゼノンだった。

いつも通りの冷めた眼差しでじっと見つめられ、これまでだったら恐怖に震えて泣き出してしまうところだが、今の自分は少し違う。

窓から差し込む日差しがまるで後光のようにもなっていて、最高に神々しい。

美麗スチルをゲットしたような気分になり、ついつい見惚れてしまう。


「おい」


しかし鋭く呼びかけられて、現実へと引き戻されたソフィアの肩がびくりと跳ねた。

声を聞いた瞬間、ゲームのワンシーンを夢見心地で見ているような気分から一転、ソフィアが本来ゼノンに対して持っていた恐れが体の中を駆け巡り、手が小刻みに震え出す。

助けを求めるかのように背後を振り返り、唖然とする。

自分について来ているとばかり思っていたマシューとハンナの姿はどこにも見当たらなかった。

罠にかけられたかのように気持ちになり、無意識にソフィアは後ずさったが、身を翻すよりも先に再び冷たい声が響く。

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