シュクリ・エルムの涙◆
「うん……リトスに教えてもらったの。シュクリは操られてなんていなかったんだ! ある人との約束を果たすために、アタシにも内緒にしてずっとこの時を待っていたんだって。サリファを……永遠に封じ込めるために」
「ある人? ねっ、それって誰なの!?」

 エルムのつぶらな瞳が急に潤んだ。言葉にしようとする口元が、泣くのを我慢するように震えた。そして……あたしの質問の答えは、本当に意外な人物の名前だった。

「……ウェスティ、だよ」
「──え?」

 サリファの亡き息子──ウェスティ!?

 パパの先代の王様の息子。パパの従兄でツパイおばちゃんの従弟。タラお姉様の昔の恋人で、許婚(いいなずけ)だったウェスティが? 何故?? どうして!? 

 だってサリファのために、王家やあたし達の親族を殺したのはウェスティじゃない! シュクリをこんな目に遭わせたのも……いえ、サリファはヴェルを「空の国」に戻すと言ったのに、シュクリしか浮かび上がらなかったのは、もしかしてウェスティの仕業(しわざ)なの??

「リトス──ジュエルが、ウェスティの右眼として捕えられていた時、ジュエルはウェスティの苦悩を知ったのだって……これ以上母親の言いなりになるのはやめたいって。ウェスティはもう誰も殺したくなかった。誰も、悲しませたくなかった。だって……ウェスティは本当にタランティーナを愛していたから」
「えっ……タラお姉様を? パパを殺そうとして、お姉様に抵抗されたその後も!?」

 エルムの泣きそうな顔がコクンと一つ頷いて、リトスが推察したウェスティの気持ちを代弁した。


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