Screw driver
低い身長をヒールを履くことで誤魔化し、童顔はメイクをすることで少しでも大人っぽく見せ、橘美月(たちばなみつき)は街の片隅にひっそりと建っているバー「Hazy」の扉を開ける。

おしゃれなランプが照らす店内には、ゆったりとしたジャズが流れ、数人の仕事終わりと思われるスーツ姿の人が何人もお酒を楽しんでいる。

「美月さん、いらっしゃいませ」

黒い制服をしっかりと着こなし、ブラウンの少し長めの髪を束ね、華やかな顔立ちの男性がニコリと笑いかけてくる。「Hazy」のオーナー兼バーテンダーの九条慶太(くじょうけいた」だ。

「九条さん、お久しぶりです!仕事が忙しくてなかなか来れなくて……」

「いつもお仕事お疲れ様です。今夜は楽しんでいってくださいね」

カウンター席に案内され、美月はカクテルを作る慶太の前に座る。ここがいつも美月が座る定位置で、まるで俳優のような慶太の細かな動きや表情をよく見れる特等席でもある。
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