あの日の記憶を
☆美波
 二十五歳の夏、陸斗から二年ぶりにLINEが来た。

『もう一度会って、話がしたい』

 それ……、私が二年前に陸斗と別れたばかりの頃、あなたに送ろうとした言葉だよ。まだ未練たらたらだった時。その言葉を打ったけれど、送信ボタンを押せなくて、結局消したやつ。

 まるで二年前に消した言葉が、二年間空中にふわふわ浮いたままだったみたい。

 今頃になって送ってくるなんて。
 まぁ、予想はしていたけれど。

 でもね、もう、遅いんだ。
 あなたのことを諦められるように、前に進むために、いっぱい泣いたし考えた。

 出した結論。

 私ね、あなたに依存していたんだと思う。いつの間にかあなたが全てで、あなた以外に何もなかった。

 あなたとの綺麗な思い出も汚い思い出も、全部、今でも大切。これからもずっと心の中にしまって、それを糧にして、自分を見つけて生きていくね。

 あなたと過ごした日々を思い出しながら一文字一文字丁寧に文字を打った。

 これが本当に最後のLINE。

『もう、会うとか、無理なんだ。ごめん。
 これだけは約束して欲しいです。次に陸斗が誰かを愛した時、私みたいに慣れないで、相手の愛にちゃんと向き合って。そして、私みたいにわがままで我慢ばっかりして溜めこんでる。そんな人と恋に落ちないでください。最後のわがままに指切りをお願いします。

 ありがとう。
 さよなら。
 ばいばい。』

 送信して、すぐに彼の連絡先を全て消した。

 彼が返事を書いて、送信を押しても、こっちに届かないよう拒否設定にした。返事が来て、心が揺れてしまうかもしれない自分が、怖くて。

 お互い別々の道を歩んでも、一緒に幸せになろうね。
 あなたの幸せ、心から願ってます。
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