あの日の記憶を
私が陸斗と出会ったのはちょうど今から十年前、十五歳の時だった。
高校に入り、同じクラスになって間もない頃から、私の事が好きなんだなって周りから見ても明らかに分かるような、情熱的なアプローチをされた。
休み時間、他の男子に話しかけられて、話していると必ず彼が勢いよく近づいてきて、話に割り込んできたり、彼のペンケース、中身全部揃っているのに、私のが使いたいって言ってきて、シャープペン貸してとか何回も……。あと、いちいち何かしら褒めてくれていた。髪の毛を三センチだけ切った時とか、誰にも気付かれないような些細な変化にも気がついてくれて。
あと、視線を感じて振り向くと必ず彼がこっちを見ていた。
私は内気なタイプだったから、そんな彼に少しずつ惹かれていった。
LINEを聞かれた。教えあったその日から毎日夜寝る前に、学校の話とか会話して眠るのが日常になった。
『おはよう』『おやすみ』『今何してる?』なんて、どんな些細な言葉を彼のLINEに送っても、既読になるとすぐに返事が来た。私もすぐに返した。
私は完全、彼に恋をした。
彼も私のことがきっと好き、だと思う。
日が経つにつれ、お互いの“好き”な気持ちも育っていった。
もうすぐ卒業だねって時、告白された。
その時の、天気、状況、景色、今でも鮮明に心の中で刻まれている。
雪が優しく降っていて、でもほのかに暖かい日だった。
学校から帰る時、彼は校門を抜けた所で、無邪気に友達と雪玉をぶつけ合って遊んでいた。なんだか小さい子のような表情をして。
私が通り過ぎようとすると、名前を呼ばれた。それからいきなり「ちょっと来て!」って言われて。
彼はいつも私の歩幅に合わせてくれて、一人で歩く時、他の誰かと歩く時はいつも早歩きなのに、ゆっくり歩いてくれた。この時も。
学校のすぐ近くにある公園に着く。
雪化粧で綺麗に染まった大きな木の下に私達は立った。
彼は周りの目を気にしないタイプだったけれど、気になる私に気をつかい、人がいない場所を選んでくれたのかな?
それから「好き、付き合って欲しいです」って告白された。
改まった様子で珍しく緊張している様子だった。
もちろん返事はOK。
生まれて始めて、恋人が出来た。
ほのかに香る小さな春風と共に、ドキドキやワクワク、色んな気持ちが私を包み込んだ。
卒業して、お互い就職した。
彼は建築のお仕事で、私は携帯ショップの店員。
会える時間は高校の時に比べると減った。
けれど、彼は就職してすぐに一人暮らしを始めて「いつでも来ていいよ!」って言ってくれて、アパートの鍵をくれたから、会えた。
仕事が終わると買い物して、当たり前のように彼の家へ行き、ご飯を作るようになった。
元々料理するのは好きでは無かったけれど、彼が喜んでくれるから、彼が好きな揚げ物、唐揚げや天ぷらとかを沢山作った。
彼は洗濯物を溜めがちだったから気になって、彼が少しでも快適に過ごせるように、洗濯物を洗って干して、掃除機もかけて。
私の家は社会人になっても門限があったから、二十二時までには帰らないと行けなくて。
離れる瞬間の時間が寂しくて、切なかった。
「一緒に暮らしたいね」って毎回話していて、親からやっと同棲する許可を貰えて、彼と一緒に暮らし始めた。
ちょうど私が二十歳になった時。
幸せだった。
とにかく幸せだった。
仕事が終わるとふたりはすぐに家に帰る。私がご飯を作っていると、一緒に作ってくれたりもした。
休みの日は、いつも一緒にいた。
二人共、晴れの日の外が好きだったから大体どこかに出かけていた。
「水族館に行きたいな」ってテレビで水族館特集をやっているのを観ながら呟いたら、彼はすぐにネットで「いいとこないかなぁ」って調べてくれて、連れていってくれた。たまに言う私の願望を彼は毎回叶えようとしてくれた。
雨の日は「雨が嫌だね」って言いながら布団でゴロゴロしながらくっついていたり。
優しかったな。
行動早くて頼もしかったな。
本当に、本当に幸せだったな。
でもその幸せは、少しずつ崩れ始めた。
環境に、慣れすぎちゃったのかな?
高校に入り、同じクラスになって間もない頃から、私の事が好きなんだなって周りから見ても明らかに分かるような、情熱的なアプローチをされた。
休み時間、他の男子に話しかけられて、話していると必ず彼が勢いよく近づいてきて、話に割り込んできたり、彼のペンケース、中身全部揃っているのに、私のが使いたいって言ってきて、シャープペン貸してとか何回も……。あと、いちいち何かしら褒めてくれていた。髪の毛を三センチだけ切った時とか、誰にも気付かれないような些細な変化にも気がついてくれて。
あと、視線を感じて振り向くと必ず彼がこっちを見ていた。
私は内気なタイプだったから、そんな彼に少しずつ惹かれていった。
LINEを聞かれた。教えあったその日から毎日夜寝る前に、学校の話とか会話して眠るのが日常になった。
『おはよう』『おやすみ』『今何してる?』なんて、どんな些細な言葉を彼のLINEに送っても、既読になるとすぐに返事が来た。私もすぐに返した。
私は完全、彼に恋をした。
彼も私のことがきっと好き、だと思う。
日が経つにつれ、お互いの“好き”な気持ちも育っていった。
もうすぐ卒業だねって時、告白された。
その時の、天気、状況、景色、今でも鮮明に心の中で刻まれている。
雪が優しく降っていて、でもほのかに暖かい日だった。
学校から帰る時、彼は校門を抜けた所で、無邪気に友達と雪玉をぶつけ合って遊んでいた。なんだか小さい子のような表情をして。
私が通り過ぎようとすると、名前を呼ばれた。それからいきなり「ちょっと来て!」って言われて。
彼はいつも私の歩幅に合わせてくれて、一人で歩く時、他の誰かと歩く時はいつも早歩きなのに、ゆっくり歩いてくれた。この時も。
学校のすぐ近くにある公園に着く。
雪化粧で綺麗に染まった大きな木の下に私達は立った。
彼は周りの目を気にしないタイプだったけれど、気になる私に気をつかい、人がいない場所を選んでくれたのかな?
それから「好き、付き合って欲しいです」って告白された。
改まった様子で珍しく緊張している様子だった。
もちろん返事はOK。
生まれて始めて、恋人が出来た。
ほのかに香る小さな春風と共に、ドキドキやワクワク、色んな気持ちが私を包み込んだ。
卒業して、お互い就職した。
彼は建築のお仕事で、私は携帯ショップの店員。
会える時間は高校の時に比べると減った。
けれど、彼は就職してすぐに一人暮らしを始めて「いつでも来ていいよ!」って言ってくれて、アパートの鍵をくれたから、会えた。
仕事が終わると買い物して、当たり前のように彼の家へ行き、ご飯を作るようになった。
元々料理するのは好きでは無かったけれど、彼が喜んでくれるから、彼が好きな揚げ物、唐揚げや天ぷらとかを沢山作った。
彼は洗濯物を溜めがちだったから気になって、彼が少しでも快適に過ごせるように、洗濯物を洗って干して、掃除機もかけて。
私の家は社会人になっても門限があったから、二十二時までには帰らないと行けなくて。
離れる瞬間の時間が寂しくて、切なかった。
「一緒に暮らしたいね」って毎回話していて、親からやっと同棲する許可を貰えて、彼と一緒に暮らし始めた。
ちょうど私が二十歳になった時。
幸せだった。
とにかく幸せだった。
仕事が終わるとふたりはすぐに家に帰る。私がご飯を作っていると、一緒に作ってくれたりもした。
休みの日は、いつも一緒にいた。
二人共、晴れの日の外が好きだったから大体どこかに出かけていた。
「水族館に行きたいな」ってテレビで水族館特集をやっているのを観ながら呟いたら、彼はすぐにネットで「いいとこないかなぁ」って調べてくれて、連れていってくれた。たまに言う私の願望を彼は毎回叶えようとしてくれた。
雨の日は「雨が嫌だね」って言いながら布団でゴロゴロしながらくっついていたり。
優しかったな。
行動早くて頼もしかったな。
本当に、本当に幸せだったな。
でもその幸せは、少しずつ崩れ始めた。
環境に、慣れすぎちゃったのかな?