イケメン、お届けします。【注】返品不可
わたしとオオカミさんに「次」はない。
そう思ったら、胸がきゅっとなって答えに詰まる。
オオカミさんは、そんなわたしとは対照的に平然と嘘を吐く。
「次の休みにでも行ってみる」
「ショウくんは働きすぎなのよ。無理やりにでも、のんびりさせてあげてね?」
「あ……はい」
女将さんに頼まれて、イヤとは言えずに頷く。
次々出される料理はどれも優しい味で、長らく帰っていない実家を思わせた。
女将さんが聞かせてくれるオオカミさんの小さい頃の話も微笑ましくて、胸が温かくなる。
美味しい料理とお酒、楽しい会話。
あっという間の二時間だった。
「そろそろ出よう」
オオカミさんに促されて席を立ち、支払いはツケだと言われ、結局ここも奢られる。
「また来てね? ひとりでも大歓迎よ! あかりちゃん」
「はい。また寄らせていただきます。ごちそうさまでした」
女将さんに見送られ、何となく歩き出したものの、時刻は夜の八時。
大人の夜遊びを切り上げるには、まだ早すぎる。
(でも、わたしはそうでもオオカミさんもそうだとは限らないし……ルミさんに頼まれた「今日一日」というのが、夜の十二時までとは限らないし……)
あれこれ考えていると、ちらりと腕時計を確かめたオオカミさんが呟いた。
「まだ早いな。どこかのバーにでも……」
考えるより先に、口が勝手に動いていた。
「あのっ! 今度は、わたしに奢らせてください! わたしの行きつけのお店に行きましょう? ここからすぐなんです。すごく楽しいお店で。オオカミさん、あの映画を思い出して眠れなくならないように、酔って騒いで、そのまま寝るみたいな方がいいんじゃないかと……」
断られたくない一心で無理やりな理由を付けたら、噛みつかれた。
「子どもじゃないんだっ! そんなわけあるかっ!」
「じゃあ、夜にひとりであの映画、見られます?」
「…………」