イケメン、お届けします。【注】返品不可
深入りしないよう予防線を張り、傷つかないように身構えて。

だから、浮気されても簡単に諦めがつくのかもしれない。

フラれることを前提に始めるところからして、ダメ男を呼び寄せる体質なのではなく、最初からダメになる理由がありそうな相手を選んでいる……とも言える。


「でもね、だからといってあかりちゃんが悪いわけじゃない。相手の男がクズなの。あかりちゃんに相応しい相手が、この世界のどこかにいるはずよ!」

「だといいんですけどね……」


力説するルミさんに頷くには、もういろんなものを失ってしまった。

たとえば、好きという気持ちだけで、突っ走る情熱とか。

たとえば、「いま」だけを大切にして、いずれ来る終わりから目を逸らし続ける器用さだとか。

幸せになりたいという気持ちすら、どこかに置き忘れて来たのかもしれない。


「大丈夫! 願い事は口にすれば叶いやすくなるって言うでしょう? 手始めに、誕生日プレゼントからいきましょ。あかりちゃん、どんなプレゼントが欲しい?」

「そうですねぇ……」


ルミさんの質問に、首を捻り、ロングアイランド・アイスティーをぐびぐびと飲み干す。

シェーカーを振るイケメンバーテンダーをぼんやり眺め、あり得ないシーンを想像した。


「真っ赤な薔薇の花束を持ったイケメンが突然現れて、プロポーズされるとか。そんなことされたら、その場で『イエス!』って叫んじゃうかもー。出会って、徐々に絆を深めて、愛情を確かめあって、それからゴールインするなんてまどろっこしいことするの、もう面倒くさい。出会った途端にフォーリンラブで、ウエディングベル鳴らしちゃいたい。下手に時間をかけるから、浮気されるような気がするし」

「…………」


自覚はないが、酔っていたのだろう。
思わず赤裸々すぎる本音をぶちまけたところ、さすがのルミさんも、引いてしまったようだ。


「あ、でも、プロポーズまでいかなくてもいいんですけどね? とりあえず、愛の告白とかでも十分です」


慌ててとりつくろったが、再び右隣の席に座っている男性が、咳き込み始めた。
こちらの話に聞き耳を立てていたと思われる。


(失礼なヤツ!)


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