イケメン、お届けします。【注】返品不可
もう二度と恋なんかしない! なんて若気の至りで誓いを立て、勉学に専念して大学を無事卒業。

第一志望だった現在の勤め先に無事、就職を果たした。

そして、「恋なんてしない!」という誓いをあっさり破り、指導係をしてくれた先輩社員といい雰囲気に。

が、いよいよ二人きりで食事のお誘いを受けたところで、お局様より「あの男、学生時代からの彼女と婚約しているわよ」というお告げを受け、乙女モードはシャットダウン。

そのほかにも幾人かと付き合ったが、二股、浮気は日常茶飯事。結婚詐欺、ホストまがい、キャッチセールス目的など、ロクデモナイ相手ばかりを引いている。

悲惨に尽きる恋愛経験の数々だが、どれもこれも危ういところで踏み止まり、借金を背負うことも訴えられることも、ストーカー被害に遭うことも免れている。

奇跡に近いと思う。
男運はなくとも強運ではある。
乙女心はすでにズタボロだけれど。


「ある意味、すごい出会い運ね……。あかりちゃん、すぐ他人を信用しちゃダメよ? 世の中、いい人ばかりじゃないのよ?」

「わかってますよ! でも……信じるより、疑う方が疲れるし」


いちいち人の言動の裏を読んだり、親切に下心が含まれていないか疑ったりするのは面倒だ。

誰に対しても偏見や先入観を持たずにフラットに対応すれば、当たり障りのない最低限の関係は維持できるし、知らなければ幸せなままでいられることも、多々ある。


「決定的なことが起きない限り、性善説でいたいんです」

「そういうところ、利用されちゃうのかもしれないわねぇ」


意外なルミさんの言葉に、首を傾げる。


「どういう意味ですか?」

「サインに気づいていても、見たくなければ目をつぶるってことでしょう?」

「それは……」

「だから、相手にとって都合のいい女になっちゃうのよ。あかりちゃんが、いつも一歩引いた感じだから、相手もこれくらいなら許してもらえるだろうと思うのかもね」

「…………」


グサリと来た。

身体だけの関係を結んだことはないけれど、これまで付き合った人たちのことが「すごく」好きだったのかと訊かれれば、どれも微妙だ。

いつからか、相手に何かを期待するだけ無駄だと思うようになっていた。
< 4 / 67 >

この作品をシェア

pagetop