財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
 用事を思い出したと紗世は言っていたが、気まずかったのだろう。午後に連絡を入れて会いに行くつもりで、車を走らせる。

 奈緒が二台借りている駐車スペースに車を止め、ゆっくりした足取りでエントランスへ足を運ぶ。

 道路の電柱に数人の記者がいる。記者に気にも留めずエントランスに入り、預かっているカードキーでロビーへ入る。

 俺がマンションへ姿を見せることで、浅野との熱愛を否定するためだ。

 七階建ての最上階に菜緒の部屋がある。

 インターホンを鳴らしてすぐ内側からドアが開き、奈緒がにっこり笑う。

「ずいぶん余裕だな」

 奈緒の笑顔に嫌味のひとつも言いたくなる。

「忙しいのにごめんって言ったでしょう。鍵を持っているんだから勝手に入ってくればいいのに」

 リビングへ入りアジアン家具の籐のソファに腰を下ろす。

「休日なのにわざわざスーツを着てきてくれたのね。それも飛び切りおしゃれなやつ」

 隣に座り体を俺の方に向けた奈緒は、スーツの胸ポケットのハンカチに手を伸ばす。

「お前のためじゃない。で、なぜエントランスにふたりで出たりしたんだ?」

「う~ん、うっかり。ほら、離れがたいときってあるじゃない?」
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