財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
「……紗世、ちょっと気分が悪くて……目眩を……驚かせ、ちゃった……わね」

 体を起こそうとする母だが、ぐらっと揺れて床におでこをつける。

「お母さん、救急車呼ぶわ」

 呼吸も苦しそうで、ソファの背もたれにあったひざ掛けを母の体に掛けて電話の元へ走った。



 救急車は五分後に到着した。急いで私服に着替えていた私も一緒に乗って、近くの大学病院へ向かう。

 救急外来に運ばれ母が診察を受ける間、廊下のベンチで両手を組み、たいしたことがないように祈りながら待っていた。

 三十分くらいが経っただろうか。診察室のドアが開いて医師と看護師が姿を見せた。

 慌ててベンチから立ち上がる私に、医師は名前を確認した。

「名雪さんの娘さんでよろしいですか?」

「はい、娘です」

「明日、詳しく検査をしなければなりませんが、脱水症状に加えて胃(い)潰(かい)瘍(よう)のようです」

「胃潰瘍……。母は最近食事をすると吐きたくなると」

 倒れる前に病院へ連れて行けば良かったと後悔する。

「今夜は入院して脱水症状の点滴をしましょう。明日の午後、胃カメラ検査をします。お母さんは今眠っているので、少ししたら病室に移しますから」
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