財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
 がっかりした我妻社長は続ける。

「私も中山社長に憤りを覚え、方々知り合いに居所を知らないか聞いているのですが、なしのつぶてで」

「お知り合いに……ありがとうございます」

 中山社長を紹介した手前、責任を感じているのは表情からわかる。詐欺が発覚した際にも即日訪問してくれているし、優しい人だと思った。

 義務的に食事をしに来たが、ちゃんと我妻社長と向き合い、彼の人となりを知ってもいいのかもしれない。

 京極さんのように心臓が高鳴りはないけれど……。

 スタッフがシャンパンの瓶を手にし、我妻社長に説明をしている。

「それでお願いします」

 グラスに、透明に近い金色のシャンパンを注いだスタッフが離れていく。

「少し辛口のシャンパンを選びました。紗世さん、乾杯しましょう」

 我妻社長はグラスを掲げる。

 少し辛口……京極さんだったら、私にどんなのが飲みたいのか聞いてくれる……。

「――世さん? 紗世さん?」

 呼ぶ声にハッとなって。じっと見つめる我妻社長へ視線を向ける。

「あ、はい。すみません」
< 53 / 113 >

この作品をシェア

pagetop