財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
「あっ」

 想定通りイヤリングは耳から外れ、絨毯に落ちた。

 京極さんとの距離を詰めるために腰をずらして腕を下に伸ばすが、なかなか取れないフリをするつもりが、淡水パールのイヤリングが捜せない。

 体勢が痛くなり一度体を起こす。

「取れたか?」

「暗いので、すみません」

 もう一度顔を下げるときに、思いきって京極さんの太腿に右手を置き、左手でイヤリングを捜索する。

 顔は必然的に斜め上を見る形になって、京極さんと目と目が合う。

「きょ、京極さん、顔はあっちに……」

 涼しげな眼差しで逸らさずに見られて、自分から行動を起こしたのに急激に恥ずかしくなった。

 彼の太腿は筋肉質のように思える。

 こんなこと考えちゃうなんて……。

 顔に熱が集まってくる気がしてきた。薄暗いのが幸いだ。

「見つからないのならスタッフに頼もう」

「あ、待ってくださいっ。ありました!」

 手に触れた淡水パールをつまんで体を起こそうとしたが、疲れる体勢を続けたせいで目眩を覚え、京極さんの胸にふらっと体が揺れる。
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