その騎士は優しい嘘をつく
 使用人に坊ちゃんと呼ばれているハイナーも新鮮だった。

「それに、三人くらいだったら、部屋もあまっているし、ここに住んだらどうかしら? ここからならあなたの治癒院もそんなに遠くはないでしょう?」

 そうだな、それがいい、とハイナーの父は頷いている。

「母上」

「アンネッテは仕事に復帰できる。私たちも可愛い孫と嫁に囲まれて生活ができる。もう、最高じゃない?」

 そこに息子が含まれていないことにアンネッテは気付いた。
 どうしましょう、という意味を込めて、アンネッテはハイナーの顔を見た。ハイナーは苦々しい表情をしているが、その口元が嬉しそうに緩んでもいる。

「ハイナー。ほら、夜もね。必要があればいくらでもハイネスのことを預かるわよ。子供たちの情操教育に悪いじゃない? いくら赤ん坊でもねぇ?」

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