その騎士は優しい嘘をつく
「あ、はい。それは今、休団扱いになっていますので、落ち着いたら戻るつもりです」

「じゃ、その間、この子はどうするつもりなの?」

「えと、然るべき人に見てもらおうかと思っています」

 あの団長は、侍女にでも預ければいいと言っていた。

「その、然るべき人に心当たりはあるの?」

「えと、魔導士団の方で手配してくれるかと」

「まあ、ここにも一人、然るべき人がいるのだけれど?」
 と、にっこりとハイナーの母が笑う。

「母上」

 と慌てるハイナーを見るのも、アンネッテにとっては初めてだった。それに、ハイナーがこんなにいいところのお坊ちゃんであったことも知らなかった。まあ、家が裕福そうだなとは思ってはいたのだが。
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