その騎士は優しい嘘をつく
 アンネッテの姉を見た時に、ハイナーは誰かに似ていると思った。母だ、と今になって思う。

「わ、わかり、ました」
 苦々しく返事をするハイナー。この母親には敵わない。

「お世話になります」
 アンネッテは頭を下げた。
 ハイナーの母は勝ち誇った笑みを浮かべていた。

「それにしても、この子。嫌になるくらいハイナーに似ているわね。もう少しアンネッテの要素をもらっても良かったと思うのだけれど」
 腕の中で幸せそうに眠る孫を、飽きもせずにじっと見ている。

「文句があるなら返してください」
 ハイナーは母親に向かって腕を伸ばし、息子を奪い返そうとするが、母はひょいと避けた。

「同じ顔でも、息子と孫は違うのよ」
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