その騎士は優しい嘘をつく
 ハイナーの父も母の腕の中を覗き込み、人差し指でその頬をつんつんとつついていた。あまりにもつんつんし過ぎるので、ハイナーが思わず「やめてください」と言ってしまうほど。

「ハイナーの家族に受け入れてもらえて、嬉しいです」
 それはアンネッテの本音。
 まさかハイナーがこんなにいい家の息子だとは思ってもいなかったから、身分違いだとか言われて、追い出されたらどうしようかと思い、不安だったのだ。
 だけどやはりハイナーの両親だった。ハイナーも優しいけれど、両親も優しい。だから、ハイナーも優しい。

 ちょっと涙ぐんでいるアンネッテに、ハイナーは柔らかい視線を送る。だが、その甘い空間にはすぐに邪魔が入る。

「それよりも、問題はハイナー、あなたよ。なんで遠征の前にきちんとアンネッテを紹介しなかったの? アンネッテも一人でよく頑張ったわね。本当に、このぼけかす息子のことを一年も待ち続けてくれて、そしてこんなに可愛い孫を生んでくれて、あなたには感謝しかないわ」
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