最初で最後の恋をおしえて

「でもそしたら、今まではどうやってお付き合いを?」

「放っておいても、女性の方から言い寄ってくるから」

 少しだけバツの悪い顔をして、羽澄は顔を背けサラダを完成させた。

「悪い男ですね」

「ああ、悪い男だ。だから、紬希の考えを聞いて過去を悔い改めたくなったよ」

「小学生の恋にときめいていたからですか?」

「いや」

 羽澄は手の甲で、紬希の頬をそっと撫でて言う。

「決められた婚約者のために、恋をしないと決めているって」

「それは……」

 本人とも知らず、そんな打ち明け話をした頃が恥ずかしくなる。

「そんな大切な思いを、なんというか抑えられなくて、ごめん。もっと特別な日を選んで、記念に残るような日にしてあげるべきだったよな」

「謝られると、惨めな気持ちになります」

 つい本音を漏らすと、羽澄が目を見開いて、それから目を細めた。

「勘違いしないでくれ。そのくらい、紬希がほしくて堪らなかった」

 両頬を手で挟まれて宣言される。
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