最初で最後の恋をおしえて
詩乃と別れ、羽澄とふたり彼の自宅へと帰る道。寄り添って歩く羽澄を見上げて言う。
「なんだかんだ言って、寂しいんじゃないですか?」
紬希から見ても素敵な女性だ。彼女みたいな女性が母親だったら、きっと毎日が楽しい。
「いいや。心配だった。再婚したら、相手の男が俺に惚れて良からぬ関係になるといけないからって本気で言う母親だよ?」
呆れたように言う羽澄に、笑みがこぼれる。
羽澄はつないでいる手に、指先を絡めて言う。
「これで一緒に住めるな」
「そう、ですね」
幸せで、少しだけ不安もある。
「父が、結婚したら、羽澄の姓を名乗ればいいって」
「は?」
文字通り目が点になっている羽澄に、説明を重ねる。
「父は私に如月の重圧から解放されて、自由になってほしいって」
「なにを言って、俺は、あの人の跡を継ぐのだとばかり」
髪にクシャリと手を入れて、眉根を寄せる。困惑して当然だ。紬希も聞いたときは驚いた。