最初で最後の恋をおしえて
「ブッ」と吹き出したのは葵衣で、紬希も目をまん丸くして羽澄を凝視した。
「そんなに驚く? 楽しそうに話してたじゃない」
羽澄は変わらない爽やかな顔つきで、飄々と言ってのけた。
「送らせて」と告げ、コーヒーショップを出たあとも羽澄はついてきた。そして気になったという内容について話し始めた。
「恋って、そんなにいいものなのかと思ったら、すごく気になってしまって。恥ずかしい話、恋を知らずに生きてきたから」
つらつらと話す羽澄に、葵衣は冷めた声で返す。
「気持ちがなくても、付き合うことはできますよね」
これには、紬希が咳き込んで注意した。
「葵衣! それは失礼なんじゃ」
あたふたする紬希に、羽澄は微笑んで応える。
「如月さんは優しいんだね。大丈夫。皆瀬さんが正しいから」
紬希は複雑な心境になり、唇を固く引き結んで俯いた。対して葵衣は冷静だ。
「羽澄さんほどのスペックがあって、今までなにもないって思う方が失礼じゃない。それで、そんな羽澄さんが、紬希になにを聞きたいっていうんですか?」
葵衣は紬希には理解できない考えを口にして、話を先へと促した。