最初で最後の恋をおしえて
「ハハ。二着目の顔拓」
魚拓ならぬ顔拓。スーツにくっきりと化粧がついてしまっていた。
「今日は羽澄さんが悪いんですからね」
「はいそうですね」
文句を言っているのに、羽澄はどこかうれしそうにしている。笑われたせいで、涙もどこかにいってしまった。
「羽澄さん?」
棘のある声色で言ったのに、羽澄は「大和って呼んでよ」と無理難題を突きつける。
「嫌です」
「どうして? 恥ずかしいから?」
余裕な態度で言われ、目を三角にする。
「呼ぶ必要がないからです!」
こっちは怒っているのに、なんだか空回っている。羽澄は、落ち着き払って質問をしてくる。
「俺たち、そのうちいつか結婚するから、婚約者なんだろう?」
「ええ。まあ、そうだと思います」
なにを急に言い出すのだろうと、羽澄をマジマジと見つめる。
「立場的に、俺が如月を名乗るようになるのだと思うが、そしたら、俺は羽澄でもなんでもなくなる」
どうしてだろう。彼が如月になると言われると、苦しくて泣きたくなった。
「また泣きそうな顔してる。うれしいというより、つらそうだ」
心を読まれ、言葉に詰まる。