最初で最後の恋をおしえて

 立ち上がった羽澄が振り返って言う。

「いつまでも玄関にいても仕方がない。こっちにおいで」

 呼ばれて立ち上ろうにも、足は立ち上がり方を忘れてしまったみたいだ。

「腰抜けた? 悪かった。あんまりにも急に話し過ぎた。もう少し格好つけて言うつもりだったのに」

 なにを? という気力は残っていない。

 軽々と抱き上げられ、思わずしがみつく。

「あの、スーツ」

「もう諦めてるから平気。まとめてクリーニングに出すさ」

「請求してくださいね」

「そうだね。一着につき、キスひとつは?」

「羽澄さん!」

「冗談だよ」

 なんだか嫌だ。こんなやり取りが、戯れあっているみたいで、心地いいなんて。
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