最初で最後の恋をおしえて

 言葉少なに返事をする羽澄に、決壊した思いは止められなかった。

「私は羽澄さんと関わって、楽しかったときもあったけど、つらくて、見たくなかった感情というか」

「黒い感情?」

 羽澄の助言に小さく頷く。

 最近はつらいばかりで、こんなにつらいなんてやっぱり恋とは違う。

「俺が好きで仕方ないとしか聞こえない」

 うれしそうに言う羽澄の胸をつい、軽くたたく。

「違います。絶対」

「正常な気持ちだ。俺も相川さんが紬希に手を伸ばしたとき、咄嗟に体が動いた。今思えば、紬希に誰も触れさせたくなかったんだと思う」

 相川の話が出て、言葉に詰まる。それはずっと最初の頃。羽澄と紬希が話すか話さないかくらいの面識しかない頃だ。

 言うだけなら、なんとでも言えますよね? そう思うのに、どこか浮ついた気持ちになる。

 この気持ちの名前が、恋だと言うの?

「もしも、もしも羽澄さんの言う通りだとしたら、私はそんな気持ち知りたくありませんでした」

 言ってから、失言だったと思っても遅かった。寂しそうに眉根を寄せる羽澄が、「そうだよな。ごめん」と謝り、体を離した。

 嫌だ。行かないで。

 心で強く思ったが、声には出せなかった。

 この自分で操るのが難しい気持ちが恋だというのなら、やはり自分にはまだ早かったのだ。
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