もう、キスだけじゃ足んない。

【桃華side】


「もう、杏ってば話聞いて……っ、んんっ!?」


玄関のドアが閉まったかどうかも確認しないうちに。


「待って、杏……っ、んん、」

「っ、は……」


ぎゅうっと抱きしめられた瞬間。

腰が砕けちゃうかと思うほど、激しいキスが何度も何度も落ちてくる。


ここ、玄関なのに。

まだ靴も脱いでないのに。


わかっているのに、それさえも頭から抜けちゃうくらい、杏のキスはあたしのぜんぶをとかしていく。


「っ、きょ、う……」

「ベッド行くよ」


ベッド。

その言葉にはずかしがる余裕もない。


「いい子。そのまま掴まっててね」


ふわっと抱き上げられて、靴も脱がされて。

そのまま杏の部屋と連れて行かれる。


「桃華」

「んんっ、」


背中がシーツに沈みこんだ瞬間。

またあのキスの雨が降ってくる。


「もっと口あけて、」

「ふっ、ぁ、」

「もっと舌、絡ませて」


あつい。めまいがする。

酸素が回ってない。くらくらする。


「っ、は……、」


いつも穏やかな杏が、優しい杏が。


「なに考えてんの。
もっとキス、集中して」

「んぅ……」


「もっと俺に応えて」


息苦しくてちょっと唇を離そうとするだけで、不機嫌な顔して、また深く唇を塞いでくるから。


「ふっ、あ……!」


「だーめ。
逃げたらほら、見えちゃうとこに痕つけちゃうけどいいの?」


「っ、だ、め……っ」


もう、なにも考えられない。
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