もう、キスだけじゃ足んない。


キスされながら、あたしの体をすべる熱い手。

ほんともう、水着みたいなメイド服だから。


「あっ……!」


「ん、ここ弱いね。覚えた。
ここは?」


「ふっ、んっ……!」


耳から首、そして鎖骨。


「どこさわっても声甘くなっちゃうのに、なんでこんな男のロマン詰め込みましたよ、みたいな格好するの」

「杏……っ、」


「なんで俺がこんな怒ってるか、わかってる?」

「え……?」


「俺はやめないから、このまま答えてね」


杏の目を見た瞬間。

杏がよほど怒ってるんだってわかった。


だって見たことない、こんな……。


「頼むから……心配、させないで……」


あるのは怒りじゃない。

胸が鷲掴みされたんじゃないかってくらい、苦しくなる。


心配、不安。

その瞳がゆらゆら切なげに揺れていた。
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