もう、キスだけじゃ足んない。

つか自分で言ってて思うけど、俺心の声うるせえ……。

自分でも思うから、胡桃がずっとこれを聞いていたのかと思うと、ちょっとかわいそうになった。

とにかく。

胡桃が俺をめちゃくちゃ好きでいてくれてるのはわかってる。

前に胡桃、俺に自分の愛が伝わってないんじゃないかってかわいい心配してたけど、ふだんから胡桃を見てればめちゃくちゃ伝わってくる。


言葉にしなくても、ふれてなくても。

俺、めちゃくちゃ愛されてるなーって。


でもそれでも、俺は胡桃を好きすぎるから、やっぱり俺の方が好きだと思う。何倍も何十倍も胡桃が好き。


「遥って、心の声うるさそうだね」

「今自分でもそう思ったわ」



胡桃、ほんとごめん……。


「でも桃華と俺がそっち戻っちゃったら、同居生活終わちゃうわけだし、なんならふたりで住めば？」

「それは最高にうれしいけど……杏はいいの」


桃華と、ふたりで。


「……」


いつも冷静な杏が珍しく考え込むのは、話題が桃華のときだけだ。


それはもう、ずっと。

胡桃を好きになったときからずっと。


「好きなタイプも、好きな人まで同じって双子はいるけど、いくら他の人とはいえ、好きになるタイミングまで同じって話、聞いたことある？」


「ないけど……人を好きになるのなんて一瞬だろ」


「そうだね」