もう、キスだけじゃ足んない。


「胡桃」

「うん?」


「俺のために、こんなかわいい格好して、準備して待っててくれてありがとな。大好きだよ」


「っ!!」
『急になに!?』


心の中でも、口でも、いつも言ってることなんだけどな……。

それだけで顔を真っ赤にする胡桃。


キスなんてもうめちゃくちゃしてるし、前のドラマの撮影で泊まった旅館でも、結構際どいとこまでさわったのに、いまだに初々しい彼女が、かわいくてたまらない。


前に胡桃がかわいいかわいいうるさいみたいなの言ってことあるけど、たしかにそうだわ。


俺、かわいいしか言ってねー。

だってしょうがないじゃん。かわいいんだから。

あ、また言った。


『してくれないのかな』


心の声だ。


たしかに脳に直接語りかけられてるような感じ。

耳からじゃなくて、頭に直接。


視覚も聴覚も胡桃でうめつくされてるって、なんかいろんな意味でクるんだけど。


「遥?」

「うん?」

「えっと、その……」

「ん?どうした?」


ゆっくり頭をなでて視線を合わせれば、手の甲を口に押さえて、視線を右に左に。


パチッ。

目が合った瞬間。

かあああって、今度は首まで真っ赤に。


ほんっとかわいい。

けど頼むから、こんなとこでそんな顔すんなよ。


襲いたくなるから……。


ごはんとか風呂とか後回しにして、今すぐベッドに直行したくなるから。
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