最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「味わわないとお酒がかわいそうです」

「お酒より自分に同情した方が。あなた、結構かわいそうな人ですよ?」

そうか、私はかわいそうな人に見えているのか。

志遠さんもすごく心配してくれているようだった。

てっきり『警戒心が足りない!』と叱られるかと思いきや、彼はむしろ私以上にしょげてしまい『君のそのすぐ人を信じるところは長所でもある』だなんて慰められてしまったくらいだ。

志遠さんは頼もしく見えて、すごく繊細なところがある。彼の気遣いを見ていればなんとなくわかる。

だから、きっと私の分まで傷ついてくれたのだろう。

でも私は悲しむよりも、相手の気持ちにまったく気づかなかった自分の鈍感さにあきれ果てている。

イギリスだけでなく日本でも詐欺師に騙されていただなんて、情けなくて天国の両親に顔向けできない……。

「シオンに写真送りますから、今だけスマイルくださいねー」

そう言ってダリルは携帯端末をかまえた。

私はテーブルに置かれている三段のケーキスタンドに頬を寄せて、にっこりと微笑んでみせる。

今、私とダリルは、高級ホテルの中庭でアフタヌーンティーを楽しんでいるところだ。

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