最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
リビングには読み物がたくさん置いてある。

ビジネス書のような小難しい本は書斎で、ここにあるのは写真集や雑誌などカジュアルなものばかりだ。どんなに眺めていても飽きることがない。

紅茶を淹れてお菓子をつまみながら、私はソファで雑誌を読む。

つい先ほどプロポーズされた女性の行動とは思えず、我ながらのんびりしているなぁと息をついた。実感が伴っていないので無理もないのかもしれないけれど……。

そもそもあのプロポーズは本気だったのか――冗談と言われた方がむしろしっくりくる。

日が落ちてすっかり暗くなった頃、志遠さんは帰宅した。

「おかえりなさい」

そう言って雑誌をローテーブルに置くと、志遠さんは立ち上がろうとする私を制止し、神妙な顔で隣に座った。

「悪かった。閉じ込めるような真似をして」

「え?」

「俺がわがままを言ったから、君は自宅にこもりダリルを遠ざけてくれたんだろう?」

申し訳なさそうな顔で私をのぞき込む。

昨日までと態度が全然違う。本当に彼はあの志遠さんだろうか。ちょっぴり神経質で、心配症で、私を小馬鹿にする彼?

「あの、志遠さん……まるで別人みたいなんですが」

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