最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「俺も困惑している。まさか君を相手に愛を誓うだなんて思わなかったから、どんな態度をとればよいのかと」

「……それ、遠回しに私をけなしてません? 別の方に誓った方がいいんじゃありませんか?」

笑顔を引きつらせると、ご機嫌をとるかのように頬をなでられた。

「――だが、君じゃなきゃダメなんだ。きっと」

君じゃなきゃダメ――そう言われて、無意識にダリルから聞いたエレノアという名の女性のことが頭をよぎった。

「婚約者みたいな方、いらっしゃるんじゃないんですか? 縁談もたくさん――」

「いないよ。すべて断った」

はっきりと告げられ、反論に詰まる。

すると、志遠さんは私の左手を持ち上げて指先を絡めた。突然のスキンシップに思わず顔が熱くなる。

「志遠、さん、なにを?」

「確かめたい。自分の気持ちを。君に触れれば、はっきりするはずだ」

そう言い訳のように答えて、私の手をぎゅっと握った。

指と指の間に高めの体温が滑り込んでくる。私より太く長く骨ばった彼の指。強く握り込まれ、平静が失われていく。

沈黙が重たくて苦しい。志遠さんは私のことをどう思っているのだろう。どんな気持ちで私の手に触れているのだろうか。

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