最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
志遠さんが頼んでくれたのは、自宅で高級な料理が楽しめるハイエンドデリバリー。

ゆったりできるようにと、ダイニングではなくリビングのローテーブルに食事を並べた。

いつもはソファに向き合って座るのに、今日はなぜか隣り合っている。

「陽芽。ローストビーフは食べたか? 君は細いんだから、もっと赤みを食べて栄養を摂った方がいい」

そう言ってフォークにローストビーフを刺し、私の口もとに持ってきてくれる。

急に甘やかしすぎではないだろうか……!

途端にかいがいしく面倒を見てくれるようになった志遠さんに、たじたじになってしまう。

「志遠さんは、女性とお付き合いするといつもこうなんですか?」

尋ねてみると、彼はゆるく笑みをたたえた。

「過去の女性のことを口にするなんて、陽芽はデリカシーに欠ける」

「す、すみません……」

思わず謝ると、志遠さんは余計に笑みを深くし、目を細めた。

「初めてだ」

「え……?」

「こんなことをするのは――したいと思ったのは、陽芽が初めてだ」

そう言って私の唇の端についたソースを親指で拭き取りぺろりと舐める。

――やはりこれは夢ではないのだろうか?

一生分の猜疑心を使い果たしたような気すらした。



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