最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
十八時、私たちはパーティー会場となるアーサーのタウン・ハウスへ向かった。

タウン・ハウスは仕事用の家、志遠さんからはそう聞かされていたのだけれど、異議を唱えたいほどの大豪邸だ。

これが本邸じゃなくて仮住まい? 伯爵ってお金持ちなんだなぁと、あらためて思い知った。

一階には三十人程度は軽く収まってしまうメインフロアがあって、足を踏み入れた途端、その三十人の目がいっせいにこちらを向き呼吸が止まりそうになった。

「目立っていますね。シオンも、ヒメも」

ダリルが私の横でぽそりとつぶやく。

ざわざわと場が騒がしくなり、ひそひそ話を始める者もいれば笑顔で寄ってくる者もいる。

当然彼らは英語だ。志遠さんとは顔見知りらしくフレンドリーな態度で接してきた。

志遠さんが私の肩に手を回し彼らに紹介してくれる。みな一様に目を見開き、興味津々と言った顔で私に握手を求めてきた。

「こちらの男性は海上運送業の経営者、ジャック・エヴァンズ社長です。海運王と呼ばれるくらいすごい方ですから、粗相がないように気をつけてくださいね」

新しい人が挨拶に来るたびにダリルは丁寧に教えてくれるのだが、紹介内容に都度戦慄する。

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