最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
***



アーサーの家に足を踏み入れてすぐ、陽芽は人々の目を釘付けにした。

すれ違うゲストや使用人は、みな陽芽の華やかな装いに目を奪われている。

着物だけじゃない、陽芽自身が放つ純真なのに妖艶で掴み切れない、ミステリアスな魅力にのまれているのだ。

『やあ、シオン! 久しぶり。今日はとびきり美しい彼女を連れているね』

プレイボーイと名高い子爵家の長男が珍しく俺に話しかけてきた。普段はあまり話すことはないのだが、陽芽のことが気になったのだろう。

『久しぶりだね、レオ。彼女は陽芽、私の恋人だ』

俺が陽芽の肩を抱くと、陽芽はにっこりと微笑んで応じてくれた。

彼女には挨拶の言葉はいらないと伝えてある。上流階級の中には発音や訛りを気にする人間もいるから、いっそ口をつぐんで微笑んでいてくれた方がよほど人々の興味をそそる。

とくに着物という最強の武器を持つ陽芽は、多少のマナー違反も許されるだろう。

謎の異国の女性――上品に笑って敵意がないことだけ示してくれれば充分だ。

『初めましてヒメ、俺はレオ。それはKimonoだよね? 初めて見たよ、とても美しい』

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