最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
彼の言葉をダリルが通訳し、陽芽はカタコトながらも『Thank you very much』と答えた。

少々発音は悪いが、着物と相まっていっそ神秘的ですらある。

レオは陽芽が男ふたりに囲まれ完全ガードされていることを知ってあきらめたのか、若干たじろいだ笑みを浮かべて『今日は楽しんで』と立ち去っていった。

陽芽が賓客に口説かれるようなことがあったらどうしようかと肝を冷やしていたが、その心配はなさそうだ。ダリルの同行を許可して正解だったかもしれない。

だが、ひとつ予想外だったのは女性たちの反応だ。

『シオン、その子どもはなに? まさか恋人じゃないわよね?』

彼女たちは俺に同伴の女性がいるにもかかわらず、懲りもせず腕を絡めてくる。

女除けにはならなかった――むしろつぶすべき敵として認識させてしまったことを後悔する。

臨戦態勢の女性たちを、陽芽は言葉が通じなくともオーラで悟ったのか、引きつった笑顔で眺めている。

強引な彼女たちに『興味はない』とストレートに言えたらどんなに楽か――だが、あまりに失礼な態度を取っては、子どもの頃から世話になっているアーサーへの無礼に繋がりかねないのでぐっとこらえる。

陽芽はこれまで世話になった恩を返そうとしているのか、文句も言わず付き合ってくれている。

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