最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
俺が帰ろうと提案しようとしたとき、うしろから『よくきてくれたね』と声をかけられた。笑顔で出迎えてくれたホストに、俺は握手で答える。

『アーサー。本日はお招きありがとうございます』

隣にアーサーの娘、エレノアがいることに気づき、心中で毒づいた。

アーサーはこれまでに親切心から幾度も縁談を持ちかけてきたのだが、娘のエレノアが二十歳を超えると、今度は娘を俺に勧めてきた。

君なら信頼できる。大切な愛娘を預けられると。

エレノアも俺との結婚にやぶさかではないらしく、会うたびに激しいラブコールを送られる。

アーサーは陽芽に手を差し出し、にっこりと微笑んだ。

『ヒメ、見違えたよ。以前会ったときも素敵だと思ったが、今日の君はその何倍も美しい』

その横で、エレノアがきらきらとした表情で俺の腕を掴む。

『シオン! 来てくれてうれしいわ! これからピアノを演奏するの、一番近くで聞いていって』

エレノアは現在二十五歳。ピアニストとして活動している。

俺の腕をぐいぐいと引っ張るエレノアに『ありがとう』と笑顔で答えつつ、やんわりと腕を解いた。

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