最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
アーサーは娘をたしなめるが、口調から甘さがうかがえる。

父親というよりは祖父の年齢に近いせいか、アーサーはエレノアにめっぽう弱いのだ。

エレノアが傍若無人に育ったのは、アーサーがかわいがりすぎた反動なのかもしれない。

『シオン。エレノア様とお話をなさってきては? 私がヒメのおそばにいますから』

ここでダリルが余計な口を開く。

『ダリル……!』

エレノアが思わぬ援軍にきらりと目を光らせた。

『お父様、お人形のお相手をなさっていて。私はシオンとお話ししてきますから』

こちらが迷惑そうな顔をしてもまったく意に介さないエレノアに嘆息する。

一度きちんと断りを入れた方がいい。君とは付き合えない、女性としては見られない、と。

俺はエレノアの手を解くと、陽芽の左手を持ち上げ身をかがめた。

「陽芽。彼女とサロンで少し話をしてくる」

「サロン……?」

「談話室のことだ。なにも心配はいらない。ここでダリルと待っていてくれるか?」

陽芽は一瞬きょとんとしたけれど、笑顔で「はい」とうなずいてくれる。

聞き分けのいい彼女の手の甲にキスを落として、君と離れるのは本意ではない、愛しているのは君だけだと行動で示す。

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