最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
『シオン。納得できないわ。あのお人形さんよりどう見たって私の方があなたにふさわしいもの』

『勝手に決めつけないでもらえるか』

『あの子はどんな家柄なの? それとも、なにか特別なお仕事に就いているの? 私よりなにが秀でているの?』

『君には関係ない』

するとエレノアは自身のドレスのショルダーを下げ、肩をあらわにした。今にもドレスが脱げそうで、俺は彼女の手を掴み制止する。

『やめないか』

『私、あなたにならなにされてもいい』

まさかこんな場所で誘われるとは思わず、あまりの強引な手段に眩暈を覚えた。下の階に父親や賓客がいるというのに。

『ふざけないでくれ。私は君に興味がないと――』

『抱いてくれないなら、私、悲鳴を上げるわ』

『なっ――』

悲鳴、乱れたドレス、泣いている女性――駆けつけてきた人間がどう思うかは考えなくともわかる。

『……姑息だ』

そういう人間が大嫌いだと、目の前で言えたらどんなに楽か。

だが、今の彼女を逆上させては、本当に強姦容疑をかけられかねない。

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