最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
『まぁ……そうだな。逆恨みは質が悪い。そういう意味では、かかわらない方が賢明だが』

やや腑に落ちない声で志遠さんは答える。

「不満そうですね」

『当然だ。陽芽に危害を加えた分、きちんと報復してやりたい。……だが、君の心を患わせるくらいなら忘れた方がいいんだろう』

志遠さんは正義感が強く情熱的な一方で、利害を計算して行動を決める冷静さも持ち合わせている。私の身の安全を第一に考えてくれたのだろう。

『これ以上、陽芽が怪しい男に引っかからないように、早く日本へ行きたいところだが――』

現在志遠さんは日本でも仕事ができるように手配してくれている。

もともと御子神グループは日本の企業であるから、そのトップである彼が日本で指揮を執るのはごく自然なこと。

これまでは相談役である彼の祖父・御子神志郎が、イギリスでの事業を成功させたいという一心で、孫をロンドンの拠点に置くよう采配していた。

しかし、祖父の期待に応えイギリスで確固たる地位を築き、騎士という称号を得た今、これ以上、ロンドンにとどまり続ける必要はない。

とはいえ、立場が立場なだけに、拠点を移すには大がかりな準備が必要となる。

『調整に半年程度はかかりそうだ。日本とイギリスを行き来することになると思う』

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