最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「志遠さんのスーツ以外の格好って新鮮です」

今日の彼はブラックデニムとシンプルな白シャツ、そしてグレーのニットカーディガン。

「君は変わらないな」

「え……そうですか?」

志遠さんと会うから、一応オシャレしてワンピースを着たのだけれど。

ベージュのニットワンピにブラックタイツ――ちょっと色が地味すぎて特別感が伝わらなかったかもしれない。

うーんと唸って自身の格好を見下ろすと、志遠さんがくすりと笑った。

「だが、暖かそうで安心した。そのニット、陽芽と赤ちゃんを包み込んでくれているみたいだな」

志遠さんの穏やかな笑みにホッとする。この服を選んでよかった。

「……機能性は優秀だ」

最後に付け加えられたひと言に、私は「ん?」と首を捻る。機能性『は』って……なんか棘があるような。

「服選びのセンスがあるってことですよね?」

「相変わらず陽芽はポジティブだ。好きだぞ、そういうとこ」

よくわからない褒め方をされながら、私たちは揃って新しい家を見て回った。

「この間取り、ロンドンの志遠さんのお家と似ていますね」

とくに一階に広めのキッチンとダイニングがあって、二階にくつろげるリビングがある間取りがあの家と同じだ。

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