最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
神妙な顔で悩み始める。

私たちが直接顔を合わせていたのは一週間足らず。あとは電話での会話ばかりなので、好みを知らなくとも無理はない。

「俺が知っていることと言えば、いつも地味な服を着ていたことくらいだ。もう少し華やかな服も着せてやりたいとは思うが、好きな色さえ知らないからな」

「それであのクローゼットだったんですね」

数撃ちゃあたる的な色合いを思い出し、私は苦笑する。

「服は志遠さんのコーディネートにお任せします。私の趣味は……そうですね、お料理とか、食べ歩きとか、珍しい冷凍食品があったら買ってみたりとか」

食への興味が強かったこともあり、大手食品会社に就職を決めた。とくに冷凍食品は、うちの会社が大きく利益をあげている分野だから、新製品が出たら必ず試すようにしている。

「なら、明日は少しだけ外に出てみるか。食べ歩きや買い物をして、お互いの趣味を知ろう」

「はい! 少しと言わず、たっぷりと――」

「もう少しで安定期だろう。ここで無理をするな」

「一週間くらい誤差ですって」

「だから。陽芽はどんぶり勘定が過ぎるんだ」

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