最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
細かい彼と大雑把な私。さっそく言い争いが始まって、私たちはくすくすと笑い合った。

正反対のふたりは、意外といいコンビなのかもしれない。

ああ。だから志遠さんは私を選んでくれたのだろう。

その日の夜。私たちは寝室の大きなベッドで寄り添うようにして眠った。まだ安定期に達していないので、夫婦の情熱を交わすことはできない。

けれど、志遠さんは私を丁寧に包み込み、抱くよりも甘く優しく私の心を溶かしてくれた。



二日目は買い物をしたり家でのんびり過ごしたりと、穏やかな一日を過ごした。

ふたりで暮らすこと三日目。イギリスへの出発を前日に控えたこの日、志遠さんの秘書から電話がかかってきた。

始めはリビングで会話をしていたものの、どんどん深刻な顔つきになっていき、しまいには書斎にこもってしまった。なんだか嫌な予感がする。

リビングに戻ってきた志遠さんは、苦虫をかみつぶしたような顔をしていて、申し訳なさそうに私へ切り出した。

「すまない陽芽。イギリスへの出立が今夜になった」

「今夜……!」

明日の朝には出国する予定だったというのに、半日も待てないほどのなにかが起きたのだろうか。

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