最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
月の半分くらいは日本にいられる――志遠さんにそう言われて、無意識のうちに一緒に暮らせることを期待していた。

しかし、彼が日本を発った翌日、イギリスの大手投資銀行『ロイヤルジェシカ』が倒産したというニュースを目にして嫌な予感がした。

志遠さんの会社がロイヤルジェシカと繋がりを持っていたのかはわからない。

だがニュースによると、欧州の景気が左右されるほどの大事件らしく、志遠さんが蒼白になってイギリスに飛んでいった件と無関係であるとは思えなかった。

一週間後。休みの日、私が部屋を掃除していると、志遠さんから連絡がきた。

今は十五時だからイギリスは……六時!? そんな早朝から何の用だろう。

恐る恐る通話に出てみると、彼の声は想像以上に深刻だった。

『すまない。しばらくこちらで指揮をとることになりそうだ』

なんとなく予想していたので驚くことはなかったけれど、胸がしんみりと痛む。

「イギリスの大きな銀行がつぶれたって件ですか?」

『陽芽も知っていたか』

「詳しくはわかりませんが……志遠さんの会社にも影響が?」

『ああ。イギリスの経済全体に影響を及ぼしている。かつてアメリカで起きた金融危機の再来とまで言われていて――とにかく、対策を誤れば、こちらも取り返しのつかない負債を抱えることになる』

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