最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「ああ、一年もあれば事態を収拾できるだろう。その間も、まったく日本に帰国できないわけじゃない。君の顔を見るくらいなら」

「でしたら、私は日本で出産して志遠さんの帰りを待ちます。志遠さんはお仕事に集中してください」

私の言葉に、志遠さんはかすれた声で「ありがとう」と漏らした。

これが私にとってのベストであると同時に、彼にとっては苦渋の決断だったということもわかっている。

私がひとりで出産すると聞いて、心配性の彼が心を痛めないわけがない。

『……使用人を雇おう。この先、君のそばに誰かがいてほしい。家事を手伝わせてもいい』

「もしかして、ダリルですか?」

『いや。さすがに女性を頼むよ。できれば出産経験があって信頼できるような人を探しておく。御子神家に古くから仕えている使用人で、ひとりあてがあるんだ』

わざわざ使用人を雇うというのは気が引けるけれど……それで志遠さんが安心できるというのなら、そばにいてもらってもいいかもしれない。

それに、なによりこの家は広い。臨月でお腹がパンパンになったとき、全部の部屋を掃除しきれるかわからない……と、掃除機を片手に思う。

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