最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「私、これから妊婦健診に行ってきますので、お留守番をお願いしてもいいですか」

「わかりました。お帰りは夕方になりますか? お夕食、作っておきますね」

尋ねられ、一瞬悩む。お願いしてもいいのだろうか。でも、使用人として来てくれているのだから、頼まないのも逆に失礼?

そんな私の葛藤を察したのか、頼子さんは頼もしい笑顔で力こぶを作る。

「坊ちゃんからは、奥様の身の回りのお世話を任されています。炊事洗濯掃除、なんでも頼んでくださいね。私、まだまだ若いですから遠慮は無用ですよ」

奥様……! 呼ばれ慣れないフレーズに驚きながらも、私は「は、はい!」と返事をする。

「では、冷蔵庫の中のものを使ってください。もし足りないものがあれば、連絡をもらえれば帰りに買ってきますから」

「お気遣いなく。近くにスーパーもありますから、買い物ぐらい私にもできますよ」

ごゆっくりと声をかけられ、私は志遠さんが紹介してくれた産婦人科へ向かった。

転居に伴い、出産も近所にある総合病院の産婦人科にお願いすることにした。引っ越してきてすぐに健診を受け、今日は二回目。

最近ではたまにお腹が突っ張るようなじんわりとした痛みがあるので、先生に聞いてみようと思う。胎動の一種ならいいのだけれど。

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