最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
二週間後にまた来るよう指示され、私は病院をあとにする。

家に帰ると、玄関の床の大理石がぴかぴかに光っていた。

廊下も塵ひとつなく、キッチンからはすでにおいしい香りが漂っている。

「おかえりなさいませ、奥様」

エプロン姿の頼子さんがキッチンから顔をのぞかせた。私は「ただいま帰りました」と彼女のもとに向かう。

「玄関のお掃除もしてくださったんですね。ありがとうございます」

「まだ玄関だけですけどね。ですが、玄関は人をお迎えする大事な場所ですから、常にキレイにしておかなければなりません」

そう言ってお味噌汁をかき混ぜる。玄関は常にキレイに――長年使用人として働いてきた信念というか、プロ意識が感じられた。

「それで奥様。病院の方はいかがでしたか? 赤ちゃんは順調ですか」

あ、と思わず返答に困る。手放しで順調とは言えないけれど、心配はかけたくない。かといって、診断結果を隠すのもそれはそれで問題だ。

志遠さんにまで報告をせずとも、身近にいてくれる頼子さんには話をしておくべきなのかもしれない。

「順調は順調なんですけど、なるべく安静にとも言われました……」

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