最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「……精神的なものも影響すると聞いた。無理やり引っ越しをさせて、ひとりにするような真似をしたから――」

志遠さんのためらうような声を聞いてハッとする。彼は自分のせいでそうなったと思い、責任を感じているんだ。

「志遠さんのせいではありませんよ! それに、頼子さんもいますし」

「そういうことを言っているんじゃない」

気を回したのか、頼子さんがささっと階段を下りていく。

気配が遠ざかったのを察し、志遠さんが私をそっと抱きしめた。

「ひとりで背負わせてごめん、陽芽」

悲痛な声が鼓膜を震わせる。

彼はいったいどんな気持ちでロンドンからここまで駆けつけたのだろう。

「……志遠さんだって、いっぱい背負っているでしょう?」

「プライオリティが違うだろう。一番は陽芽であり、子どもであり、家族だ」

「それでも、志遠さんはイギリス国民の期待を背負っているじゃありませんか」

騎士とはそういうもののはずだ。古来より騎士は君主を守るもの、国を守るもの。

現代では形は違えど、イギリス国民に安定をもたらす存在という意味では同じだ。

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