最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
『ありがとうございます……! それでこそ、シオンの選んだ人だ』

そう感謝を告げて電話は切れた。ツーツーという終話音が虚しく響く。

志遠さんの妻として、どうすべきか。ダリルの最後の言葉が頭の奥で再生される――『それでこそ、シオンの選んだ人だ』。

私は大きく息をつき、リビングのソファに座った。じっと、志遠さんが仕事を切り上げてくるのを待つ。

やがて会議がひと段落ついたのか、奥の書斎から志遠さんが出てきた。

「陽芽。体は大丈夫か? ずっと書斎にこもってすまな――」

「志遠さん、お話があります」

硬い声で切り出した私にただごとではないと悟ったのか、志遠さんは黙って私の隣に座る。

「そろそろ、イギリスへ帰ってください」

「なにを言って――」

「志遠さんがいなくても、この子は生まれます。だから大丈夫」

迷いのない目で志遠さんを見つめる。

寂しくないわけじゃない。ずっとそばにいてほしいけれど、この甘えが彼のためにならないことはよくわかっている。

「必要としてくれる人のもとに戻ってください。それがあなたの使命でしょう?」

私の目を見て本気だと悟ったのか、志遠さんは反論しかけたが、ぐっと息をのみ逡巡した。

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