最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「……わかった」

ぎゅっと私の手を握り、かすれた声を吐き出す。

「君の言葉に甘える。だがどうか、つらいときは俺に助けを求めると約束してくれ。君がひとりで苦しんでいるときには駆けつける。この選択を俺から奪わないでくれ」

「大丈夫です。私はつらくなんかありません」

「……頑固だよな、陽芽は」

私をなだめるように、こつんと額と額をあてる。

「毎日電話する」

「毎日じゃなくても大丈夫です」

「一日五分も時間が取れないほど忙しいと思っているのか?」

志遠さんが茶化すように口の端を上げる。私は緊張の糸が切れそうになって、ぎゅっと目をつむった。

「じゃあ、電話して……」

「……約束する」

その日、私たちはひとつのベッドで、抱き合うようにして眠りについた。またしばらくの間お別れすることになる。



志遠さんは約束通り毎日電話をくれて、ときにはビデオ通話でお腹の膨らみ具合を報告した。

彼の顔を見ると安心する。明日もがんばろうと思うことができる。

切迫早産は改善こそしないが悪化することもなく、頼子さんの献身的なお世話のかいもあって、無事三十九週で二七〇〇グラムの男の子を出産した。

六月の終わりのことだった。梅雨の真っただ中にもかかわらず、まるで神様が祝福してくれているかのような晴天だった。



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