最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「立派な子を産んでくれてありがとう」

三人できゅっと身を寄せて抱きしめ合う。

「大変なときにひとりにしてすまない」

「大丈夫、ひとりじゃありませんよ。晴も頼子さんもいてくれましたから」

「もうすぐロンドンの方もかたがつく。あと少しだけ待っていてくれ」

いつか三人一緒に、穏やかに暮らしたい。志遠さんが用意してくれたあの大きな家で。

そんな日を夢見て、私はそっと目を閉じてぬくもりを確かめた。



出生届とともに婚姻届も提出し、晴れて私たちは家族となった。

出産から一週間。私と晴は無事、産婦人科を退院し自宅に戻ってきた。

「さぁて奥様、これからが大変ですよ」

「……大変なのは、病院でもう充分にわかりました」

病院では二日目から母子同室で過ごしたのだが、晴はとにかく泣く。お腹が減っているわけでも、おむつが汚れているわけでもないのにギャン泣きだ。

居心地が悪いのか、眠いのか、寂しいのか――理由がさっぱりわからず、私はとにかく晴を抱いて病室内を歩き回った。

貧血はまだまだ回復しきっておらず、出産で傷ついた会陰も痛くて座ることができない。

体調不良と赤ちゃんの泣き声との闘いで、すでに疲労困憊している。

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