最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
さっそく晴が「ふえぇ」と声を上げた。しまった、さっきまではすやすやと眠っていたのに。

「どうれ。晴坊ちゃんを抱かせてください。ほーらほら、いい子ですね」

頼子さんが晴を抱っこすると、私より肉付きのいい腕と胸が気持ちよかったのか、なんだかほくほくした顔で泣き止んだ。私はホッと息をつく。

「……頼子さんが天使に見えます」

「出産直後は誰もがそんな感じですよ。旦那様のお母様だって、だいぶまいっておられましたから」

「志遠さんの、お母さんも……?」

「ええ。子どもを産んだあとは、みな不安になるものです」

頼子さんは志遠さんが生まれたときからお世話をしていたそうだから、そのときの様子も覚えているのだろう。

「まずはぐっすり眠って、体調を元通りにしてくださいね。晴坊ちゃんがお腹を空かせて泣いたら起こしますから。しばらくは二、三時間おきにおっぱいをあげなきゃなりませんが、がんばってくださいね」

頼子さんはあまり家の中を移動しなくて済むようにと、一階の和室にベビーベッドを置き、隣に私の布団を敷いてくれた。

おっぱいをあげたりおむつを替えたりミルクを作ったり、しばらくは水回りが近い方が便利そうだ。階段の上下移動は大変だろうと気を使ってくれたのだろう。

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